拾われた猫。Ⅱ
「でさー、左之さんがさ──……」
巡回の帰り道、平助の話を聞きながら総司に注意を向けていた。
「ゴホッゴホッ」
最近、総司の咳が多くなった。
本人は気にしているのか、皆の前では気付かれないように小さく咳を漏らす。
「おーい、雨?
聞いてるかー?」
「あ…ごめん。
何だっけ?」
「雨ちゃんは平助の話に興味無いんだよ」
総司の冷やかしに、ガーンと効果音が付きそうなくらいショックを受けている。
具合が悪いのにも関わらず、総司はいつも通りにふざける。
無意識に総司の顔を凝視していた。
「ん?
どうしたの、雨ちゃん」
嘘くさい笑顔が何故か疲れている気がした。
でも何も言えなくて、首を振って視線を下にずらした。
もしこれが歴史通りなら、私は彼に何て言ってあげればいいのだろうか。