拾われた猫。Ⅱ
屯所に戻ると、いつも木刀の音や誰かの足音が聞こえる屯所が静まり返っていた。
帰ってきたばかりの私たちはただ首を捻り合うだけだった。
「…香月」
一が私たちの方に小走りでやって来た。
「一くん、これ今度は何があったの?」
呆れ笑いを浮かべながら、総司が問いかける。
けれど、その質問に答えることなく私を見る。
「…香月、お前はこれから部屋で大人しくしていろ。
部屋に行く間、誰にも見つかることがないように。
誰かがお前を呼びに行くまでは、部屋から1歩も出るな。
副長命令だ」
心なしか、いつもより声が小さく感じた。
その真意が分からない私は、一の目を見ているだけだった。
「ちょっと待ってよ!
何で雨がまた謹慎みたいなことになってんだよっ」
可愛らしい大きな瞳は警戒する犬のように彼を威嚇していた。
一は「理由は後で話す」と言うだけで、ここでは話そうとしなかった。