拾われた猫。Ⅱ
◇◆◇◆◇



香月雨を部屋に戻し、3人は大広間へと移動を始めた。




「で?

何で雨ちゃんだけがこんなことになってるの?

彼女、今回は何もしてないんでしょ?」



何もかもお見通しのような笑顔は、斎藤一の表情をほんの少し曇らせたように感じる。




藤堂平助はそんな斎藤一の背中をじっと見つめていた。



「…ここから先は〝香月雨〟という名前は出してはならない」



サラリと言った言葉に、2人の目は自然に開いていく。


それを背中で感じていたのかいないのか、構わず説明を続ける。





「…今、女王の従者が何人か来ている。

ただ1通の手紙を渡すためだけに」




沖田総司は表情を強ばらせながら、「手紙?」と聞き返す。



彼の横で聞いていた藤堂平助はゴクリと唾を飲んだ。




「…手紙の内容は〝これより7日後、1週間の護衛任務を命ず〟。

それだけならば何の問題も無かったのだがな…」



言葉を濁らせる彼の説明では、2人はまだ香月雨との関連性を見出せずにいた。



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