拾われた猫。Ⅱ
「局長殿、隊士はこれで全員か?」
高い位置で肩よりも短い黒髪の女従者が、涼しい眼差しで彼らを見渡す。
近藤勇は閉じていた瞼を開いて、彼女の目をじっと見る。
彼女はクスリと声を漏らした。
彼女の光の冷たさに、何人か冷や汗を垂らしている者もいるだろう。
「この国の主は〝香月雨〟をご所望だが?」
「…申し訳ないが、そのような名前の者はここにはおりませんぞ」
いつものように豪快に笑う彼に、「ほぅ…」と意味ありげに返事を返した。
そして今度は幹部の顔を一通り一瞥していく。
「女王からの手紙の内容は承諾していただけるのだろう?」
「えぇ、勿論ですよ。
但し、〝香月雨〟という箇所以外でお願いしたい」
「……それは、〝そのような名前の者はここにはいない〟からか?」
彼女は目を細めて、近藤勇を見る。
意味ありげな彼女にとぼけた笑いを混じらせ、「困りましたなぁ」と言ってのける。