拾われた猫。Ⅱ
彼女は一緒に来ていた何人かのうち2人に声を掛け、その2人は出ていった。
「…山崎」
土方歳三は彼女たちに聞こえないように山崎丞を呼び、目で合図をする。
彼はコクリと頷く。
「それでは、俺は仕事があるので一足先に失礼します」
ペコリと一礼して出ていった。
すかさず一つに束ねた彼女が呟く。
「仕事…ね」
「申し訳ない。
我々も仕事が押していまして」
彼女はニヤリと笑って、「ふーん」と相槌を打つ。
出されていた茶菓子を口の中に頬張る。
「ん、これは美味いな」
「それは老舗の茶菓子でして───…」
話題を変えたのか、変えられたのか。
土方歳三の鋭い眼力は彼女に果たして届いていたのか。
そんなことはお構い無しに、隊士たちは一難去った雰囲気を醸し出していた。