拾われた猫。Ⅱ
「平助…」
今にも泣き出しそうな瞳に呼びかける。
力を入れずらい体を預けたまま、これまでの事を思い出す。
「総司はもう良くなったみたいだから安心しろよ」
精一杯の下手な笑顔に安心して微笑む。
平助は素直だから、隠すのが下手くそだ。
「…そっか」
本当はきっと心配で心配で堪らないはずなのに、私の方に来てくれているんだろう。
それから平助はご飯を持ってきてくれるようで、部屋を出ていった。
静まり返った部屋で、ノアの頭を撫でながら外を見る。
何も無かったように雲が流れていく。
「にゃぁ…」
いつもより静かに鳴いたノアは、私の肩に軽やかに乗る。
頭を頬に擦り付ける彼女にとても安心した。