拾われた猫。Ⅱ
私は何でもないように笑ってみせた。
「初めて使ったから体が順応出来なかった
みたい」
それを聞いて、彼は安堵のため息を漏らした。
私の選択は『言わない』。
平助は優しいから…。
「全く!
心配させんなよなっ!
罰として今日も絶対安静!」
無邪気な笑顔で私の頭を強い力でくしゃくしゃに撫でた。
変わらぬ彼の笑顔に嬉しくて、同じように笑う。
「じゃあ俺は巡回に行くけど、ちゃんと寝てるんだぞ?」
顔をしかめながらそう言うと、またニカッと笑って去って行った。
残像を見るかのように、平助が去って行った方をしばらく見ていた。
「にゃぁ…」
私の膝には乗って、見上げながら鳴くノア。
その声はどこか悲しそうだった。
「いいんだよ、ノア…」
フワフワの頭を撫でながら、嘘をついた痛みを知った。