拾われた猫。Ⅱ
「やっぱり、雨ちゃんだったんだね…」
瞳を揺らして、胸が苦しくなるほどの声で私を見たその人に堪らなくなる。
「総司…」
私の声に反応することなく、そのまま横抱きにされた。
「ちょっと…、総司…!」
まだ息苦しい喉でその名前を呼ぶけど、険しい顔のまま総司は私の部屋の方に歩いた。
案の定、私の部屋の障子を開き、布団の上にその身を下ろしてくれた。
「僕はもう治らないって言われてたんだ」
自嘲気味にフッと笑う背中は障子を閉めた。
ゆっくり私の方に振り向くと、布団の近くに座った。
「それでも、僕は刀を持って戦いたくて…近藤さんに追いつきたくて必死だったんだ」
おどけるように人差し指を立て、「僕がいないとあの人騙されそうでしょ」といつもの調子で笑って見せた。
「あの人といられるなら、誰を捨てても構わなかった。
あの人が大事だから、新選組も大事にしてた」
総司はフゥッ息を吐き、ポツリと言葉を漏らす。
「……そうだったはず…なのにね」