拾われた猫。Ⅱ
頬に触れそうになる総司の手にノアが唸る。
そんな彼女に総司はクスリと笑った。
「気の抜けないね、君も」
冗談を言いながら、その手をゆっくり下ろした。
少し下を向いて、また私に向けた顔は真剣で何も言えなくなる。
「雨ちゃんがこんなになってるのは…僕のせい?」
微かに震えた声に早く返事をしないといけない。
そう思ったのに、なんて言えばいいのか分からない。
「…」
何も言わずに私の言葉を待ってくれる。
瞳の中は不安でいっぱいのくせに、いつから総司は私にそんなに優しくなったのだろうか。
「にゃぁあ」
長く鳴いたノアに視線だけ向けると、何かを訴えるようにその場から動かず、私の目をじっと見ていた。
都合のいい取り方なのかもしれない。
私にはその姿が、〝嘘をつかなくていい〟と言われてるみたいに見えた。