拾われた猫。Ⅱ
小さく城が見えてきた時だった。
白壁の大きな城。
何かがおかしい。
「…ノア、もう少しだけ近づいてみよう」
私の言葉を理解したのか、背に乗せたまま動き出す。
綺麗な城が近づいてくる。
やっぱり、おかしい…。
綺麗すぎる。
襲撃にあったなら、何かしらの痕跡があるはずだ。
ましてや、白壁なら一つも汚れることなく終わるなんて出来るわけがない。
「…戻れ、ノア」
呟くようにそう言ったら、元の小さな姿で私の肩に乗った。
それと同時に草木がガサガサと揺れる。
「これはこれは、随分不審な人物じゃないか」
からかうような口調は、見た事のある顔だった。
…あの時私を探しに来た…。
「顔を拝見したいのだが」
表情のない顔で私に追い討ちをかける。
彼女は女王の遣いとして、以前新選組に来た。
襲撃された城はあまりに綺麗すぎる。
そして今、城が襲撃されたにも関わらず主人の側ではなく、私の目の前にいる。
つまり…。
「……罠か」
私の言葉に連動するかのように、ノアの瞳が煌めく。
そして私を包むように煙が渦巻いた。
ノアの尾が周りの煙をかき消すように私の目の前で止まる。
彼女の後ろにいた兵たちも狼狽えたが、さすがの彼女も驚いた表情を見せた。
「猫又か…。
絶滅したと聞いていたが…」
顎に手を当て、「ほほぅ…」と感心した。
「引け。
死にたくなければな」
「こんなに興味深い不審者は野放しにしておけない」
溢れ出る殺気にも気づいているはずだが、引く気配はないようだ。
私を見て笑うくらいなのだから。