拾われた猫。Ⅱ



小さく城が見えてきた時だった。



白壁の大きな城。



何かがおかしい。





「…ノア、もう少しだけ近づいてみよう」



私の言葉を理解したのか、背に乗せたまま動き出す。




綺麗な城が近づいてくる。



やっぱり、おかしい…。

綺麗すぎる。



襲撃にあったなら、何かしらの痕跡があるはずだ。



ましてや、白壁なら一つも汚れることなく終わるなんて出来るわけがない。





「…戻れ、ノア」



呟くようにそう言ったら、元の小さな姿で私の肩に乗った。




それと同時に草木がガサガサと揺れる。





「これはこれは、随分不審な人物じゃないか」




からかうような口調は、見た事のある顔だった。



…あの時私を探しに来た…。




「顔を拝見したいのだが」



表情のない顔で私に追い討ちをかける。




彼女は女王の遣いとして、以前新選組に来た。


襲撃された城はあまりに綺麗すぎる。

そして今、城が襲撃されたにも関わらず主人の側ではなく、私の目の前にいる。





つまり…。



「……罠か」



私の言葉に連動するかのように、ノアの瞳が煌めく。


そして私を包むように煙が渦巻いた。





ノアの尾が周りの煙をかき消すように私の目の前で止まる。



彼女の後ろにいた兵たちも狼狽えたが、さすがの彼女も驚いた表情を見せた。




「猫又か…。

絶滅したと聞いていたが…」




顎に手を当て、「ほほぅ…」と感心した。




「引け。

死にたくなければな」

「こんなに興味深い不審者は野放しにしておけない」



溢れ出る殺気にも気づいているはずだが、引く気配はないようだ。



私を見て笑うくらいなのだから。



< 183 / 305 >

この作品をシェア

pagetop