拾われた猫。Ⅱ
何にせよ、あまり時間が無いのは確かだ。
丞からの手紙。
あれが彼女らに偽装されたものであったとしたら、トシが見抜けないはずがない。
そう考えれば、丞本人が書いたと考えるのが妥当だ。
最初の頃の私の怪我を見ただけで、無条件に治療してしまう彼のことだ。
何かがない限りそんなことはしないだろう。
内密に増援が欲しかったのか。
初めから人数の指定などは一切なかった。
それなら、内密にする必要性が全くない。
…狙いは私を出させること…か。
彼女の足が1歩ずつ近づいてくる。
「あ、赤木様!
危険です!!」
「いいから黙っていろ」
部下の言葉を受け入れようとしなかった。
手を伸ばせば簡単に私の外套を取れるだろう場所で止まった。
外套の中でクナイを握る。
「抵抗はしないで欲しい。
お仲間に何もされたくなければな」
やはり彼女は確信していた。
私が〝香月雨〟であること。
彼女の手が私の外套にゆっくりとかかる。
「グァルルルル…」
今にも飛びかかりそうなノア。
そしてゆっくりと、彼女の手で外套が下ろされた。
露わになった紅い髪が輝く。
「赤髪…。
香月雨だな?」
彼女はニヤリと眼光を強める。