拾われた猫。Ⅱ
「そうだけど?」
落ち着き払った私の声を皆聞いていた。
赤木と呼ばれる彼女は、ニヤリとほくそ笑んだ。
「連れて行け!」
ここぞとばかりに響き渡る声に、兵たちが私を狙う。
「グァォォォォォォオオ!!!!」
痺れを切らしたノアの威嚇で足を止めた。
私はノアの方を向き、大きな体を撫でた。
「ノア。
大丈夫だから戻れ」
ノアの顔を見て、フワリと笑ってみせた。
だが、ノアは兵たちを睨みつけたまま喉を鳴らしていた。
「ノア」
彼女を呼ぶ声に私にチラリと目をやり、しばらくすると諦めたように元の体に戻った。
今だとでも言いたげに、兵は私の四肢を拘束し、目を覆った。
真っ暗で何も見えないまま、何かの中に入れられ、ゆらゆらと運ばれて行く。
ノアが擦り寄ってこない。
捕まったか、ちゃんと逃げられたかは分からない。
「赤木様!
猫又の姿が見えません!」
「逃げられたようです…」
兵たちの報告が遠くで聞こえた。
ノア…。
少し笑うと、またゆらゆらと揺られながら運ばれる。
城に行けばどうなっているか分かるはず。
左之たち…、無事でいるだろうか。
あの報告がどこまで本当かが分からない今、私が動けるのはまだ先だ。
やることは…、〝Noah〟の時と同じ。
左之たちは、余計なお世話だったって怒るかな…?
それとも、何してんだよって呆れるかな…?
こんな時でさえ、自分の事じゃなくて他人のことを考える程に、私に影響を与えたのは…。
縛られた手をぎゅっと握り、少しだけ笑みを浮かべてみたのだった。