拾われた猫。Ⅱ
鼻の奥がツーンとして、目の奥が熱くなる。
溢れそうな何かを堪えるように、必死に視線を左之の顔だけに集中させる。
左之は一瞬目を見開いたが、すぐに眉を下げて苦しそうな表情をした。
堪えることも忘れて、首を傾げる。
その時、左之の手が私の腕を引っ張った。
バランスを崩した私の体は、スッポリと左之の腕の中に収まった。
「…え……、左之?」
何が起こっているのか、フル回転する頭もなかなか理解してくれない。
「……」
何も言わずにただ私を包む腕の力を強くした。
誰かに抱きしめられたのはいつぶりだろうか。
……きっと、あの人がいなくなる前の日にこんなふうに抱きしめられた。
あの人があんなふうに私を抱きしめたのは初めてで。
そもそも、誰かに抱きしめられること自体が初めてで、どうしていいか分からなかった。
更に力が強められて、苦しいのに心地よくて、温かくて今でも覚えている。