拾われた猫。Ⅱ
彼は溜め息をつきながら立ち上がり、障子窓を開いた。
「あの世界はここの世界より汚れてる。
警察は能無しだし、政治だって今やろくに行われていない。
俺はあの世界は嫌いっすよ」
欠けた月を見つめているのか、星を見つめているのか。
私たちの世界とこの世界は陰陽の関係だ。
この世界にも殺しは日常茶飯事。
それはあの世界も同じ。
でもどうしてだろう。
この世界は私たちから見たら、眩しくて宝石みたいな輝きがある。
悲しいことも嬉しいことも、全部この世界にはある。
あの世界にも生まれる場所が違ったのなら、この世界とさほど違いは無かったのかもしれない。
多分、翔も殺すか殺されるかの場所の中で生きてきたんだろう。
「…ここの世界は綺麗だと思わないっすか?」
彼の横顔は眩しそうに目を細めていた。
「…私は帰らないために、あんたに聞きに来た」
ゆっくり私の方に向き返り、瞳を大きく開かれていた。