拾われた猫。Ⅱ
翔は私を冷たく見つめながら、乾いた笑みを浮かべた。
「そんなの聞かなくてもいい事じゃないっすか」
そんな彼に私は首を横に振る。
「ここに居たいと思うから、全部受け止めなければいけないと思う。
…私は知らなきゃいけない」
冷たい目は私を射抜いて、ゆったりと近づく。
私の目の前にしゃがみこむと、視線の高さを合わせた。
そして彼はいつものような人懐っこい笑顔を浮かべた。
「ダメっすよ。
俺がそれをすべきじゃないから」
私の頭をよしよしと撫でると、話は終わりだと言うようにまた障子窓の近くに行き、体を預けていた。
これ以上は無駄だと判断し、彼を一瞥する。
そして部屋から出ようと背を向けた時だった。
「雨さん、あんたはいつでも大事にされる存在なんすよ」
彼の表情を見ぬまま、胸が詰まりそうなほどの悔しげな声音を背に部屋を出た。
翔はどうして私にそんな事を言うのだろうか。
頭の中を回る疑問はたくさんあったけど、少しずつ自分で見つけていくしかなかった。