拾われた猫。Ⅱ
次の日、翔は何事も無かったかのように抱きついてきた。
それを佐之が止めてくれる。
いつもと変わらず私はご飯を食べた後、トシの部屋に向かう。
その途中のことだった。
私を待っていたかのように、立ちはだかる人物に足を止めた。
「……」
何かを話すでもなく、私は彼女をじっと見つめる。
すると、悔しそうに顔を歪めた。
「私が小さな時、左之助様が私を助けてくれたのよ。
…その時から好きだったのに!!!
なんで今更…、貴方なんかに!!!」
彼女は全身で私を否定する。
肩を震わせ、両の手をぎゅっと握り締めて。
「佐之がどう思っているのか、佐之にしか分からない。
それは私に言うことじゃない」
冷たく突き放すような言い方に彼女は顔を赤らめたまま、横を過ぎていった。
別に殺されかけたからといって怒る私ではない。
それは私の実力であるし、いい死に方はしないと覚悟はしている。
でも、彼女を見る度……頭に血が上る感覚に陥る。
何も無いのに、彼女にイライラして仕方ない。
その理由なんて見当もつかない。