吉田は猫である。
吉田はずんずん廊下を進んでいく。

歩幅が大きいのか、吉田の歩く速度が速いのか、少し気を緩めると吉田はどんどん先を行ってしまう。


「待ってよ吉田!」


だから私が吉田を速足で、あるいは走って、その背中を追いかけなければならないのだ。

吉田は足を止めずに少しだけ首を回して私を見た。


「先輩を待ってたら委員会に遅れます」

「ひどい!私を置いていくのね!冷血な!」

「人を冷血呼ばわりしないでくれますか」


吉田は溜息を吐くとまた前を向いて図書館を目指した。


吉田は一切私を待ったり速度を落とすことはしなかった。

おかげでちゃんと委員会の時間に間に合った。

けれど息は切れて、私は肩を上下させながら息を整えていた。


図書委員会では委員長と副委員長以外はどの席に座ってもいいことになっている。

空いている席を探して私達は席に着いた。

席に着くやいなや、吉田は不思議そうな顔をしてこんなことを聞いてきた。


「先輩なんで息切れてるんですか?年ですか?」

「うるっさい!誰のせいでこうなったと思ってるの!というか年じゃないし!あんたと1年しか変わらないわ!」

「え、俺ですか?やだな、人に責任なすとつけないでくださいよ。それに1年経つとこんなに年を取ってしまうんですね。怖いです」

「よーしーだー!」

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