吉田は猫である。
私が吉田に反抗しようとしたところで委員長が「そろそろ始めます」と言い出した。

吉田は何食わぬ顔で資料に目を通している。

私はそれを不愉快だと思いながら見つめていた。


むかつく、むかつく、吉田がむかつく。

いつだって誰もが、時間さえも、吉田の味方なのだ。

なんだか気に入らない。

いつも吉田が無条件でいい人扱い。

「いい人」に異議を唱えれば、それはたちまち「悪い人」になってしまう。


吉田ばっかり、ずるい。


真剣に資料に目を落とす、そのまっすぐな瞳が綺麗でさらに胸が苦しくなった。


くそ、吉田に弱点はないのか。

吉田の弱みが知りたい。

そんなよこしまな考えが思い浮かんで首を振って打ち消した。


そこまで落ちてはいけないと、わずかに残った理性が私を引き留める。


はあ、と溜息を一つつくと私も資料に目を通した。


しばらくして、委員会は終わった。


「終わったーっ!」

バラバラと委員達が散らばっていく中、うんと腕を伸ばしていると「何言ってるんですか」と冷ややかな言葉が耳に届いた。


「先輩、途中から寝てたじゃないですか」


その声がした方に目をやると吉田が不機嫌そうに眉をひそめていた。


「吉田見てたの?!っていうか、あれは寝てはいない!」

「委員会に参加してないのなら同じことです」

「ちーがーいーまーすー!全然違います!」

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