吉田は猫である。
ああだこうだと吉田がグチグチ言ってくるのを「ちーがーいーまーすー」と大きな声で遮る。
まるで子どもみたいだと思ったところで「廊下は静かに」と先生に怒られた。
「先輩のせいで怒られたじゃないですか」
どうしてくれるんですか、と怒る吉田に「私のせいじゃないもん」と反論すると「何を言うんですか」と更に怒られた。
「俺は静かでした。常識の範囲内の声量でした。なのに怒られたのは先輩がうるさいからです!」
「わ、私だって吉田がこんなにああだこうだと言わなかったら大声出さなかったもん!私悪くないもん!」
すると吉田は溜息を吐いて「もういいです」と言った。
「もういいです。もう俺帰るんで」
さようなら、と吉田は言いながら私を後にした。
「え、ちょ、待ってよ!」
私はなんとか追いかけようとしたけれど、吉田は速度を上げてついには走り出してしまった。
そんなに私といるのが嫌だったのだろうか。
私はあきらめて一人で帰ろうと思った。
陽はすっかり傾いて、黄色がかったオレンジの光が世界を包む。
遠くから運動部の掛け声が聞こえてくるくらいで、昇降口の付近は何の音もしない。
静かだった。
誰もいない。
まあ、みんな帰ったか部活だよね。咲も今日は塾だし。
トントンとつま先を軽く打ち付ける様にして靴を履く。
昇降口を出たところで何か小さな音が聞こえたような気がして足を止めた。
まるで子どもみたいだと思ったところで「廊下は静かに」と先生に怒られた。
「先輩のせいで怒られたじゃないですか」
どうしてくれるんですか、と怒る吉田に「私のせいじゃないもん」と反論すると「何を言うんですか」と更に怒られた。
「俺は静かでした。常識の範囲内の声量でした。なのに怒られたのは先輩がうるさいからです!」
「わ、私だって吉田がこんなにああだこうだと言わなかったら大声出さなかったもん!私悪くないもん!」
すると吉田は溜息を吐いて「もういいです」と言った。
「もういいです。もう俺帰るんで」
さようなら、と吉田は言いながら私を後にした。
「え、ちょ、待ってよ!」
私はなんとか追いかけようとしたけれど、吉田は速度を上げてついには走り出してしまった。
そんなに私といるのが嫌だったのだろうか。
私はあきらめて一人で帰ろうと思った。
陽はすっかり傾いて、黄色がかったオレンジの光が世界を包む。
遠くから運動部の掛け声が聞こえてくるくらいで、昇降口の付近は何の音もしない。
静かだった。
誰もいない。
まあ、みんな帰ったか部活だよね。咲も今日は塾だし。
トントンとつま先を軽く打ち付ける様にして靴を履く。
昇降口を出たところで何か小さな音が聞こえたような気がして足を止めた。