漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
「まだそのような目を向けるとは…。『聖乙女』はもっと賢くて慎み深い者だと思っていたが、貴女は例外のようだ。
素直に罪を認め『聖乙女』の地位を退くと謙虚でいるのなら、代わりに王妃として栄華と自由を与えてやろうと思ったのに、がっかりだ。…だが、私個人としては、その勝気さは実に好ましい…」


まるで小動物を追い詰めて楽しむように言うと、エルミドはアンバーの耳元で低い声で告げた。


「ますます手に入れたくなった」


とっさにアンバーは両手を突きだした。
その両手を包むように光が生まれたかと思うと、球となりエルミドの胸の前で圧迫されるように歪む。

『御力』を国と民を守ること以外に使うことは禁じられていた。が、例外は認められていた。自身の身が危険にされされた時だ。エルミドによって『聖乙女』たる資格を脅かされようとしている今が、まさにその時だった。

部屋中に光が満ち、エルミドとアンバーもその中に取り込まれた。





< 46 / 128 >

この作品をシェア

pagetop