漆黒の騎士の燃え滾る恋慕
今この国サンポリスは隣国スファラトと緊張状態にあった。
絶対的な『聖乙女』の庇護のもと、豊かな風土と安寧とした日々を享受し、のんびりと牧歌的でいるサンポリスとちがい、厳しい気候と乾いた土地しか持たないスファラトは、常に領土拡大を狙う好戦的な国で、サンポリスの領地をも虎視眈々と狙っていた。長く和平を結んでいたが、最近その均衡が損なわれつつあり、まさに国境はその緊張状態の最先端地域だった。


「どう…?国境の様子は?」

「小さな干渉はよく起きるが、大きな脅威になるわけでもなく…ま、相変わらず気が休まらない、って状態」

「…そう」


アンバーは国の安寧を守る立場である『聖乙女』。戦争の火種である国境の様子は気がかりだったが、かと言って直接見に行くこともかなわなかった。
『聖乙女』がこの宮から出ることは許されないからだ。
< 7 / 128 >

この作品をシェア

pagetop