お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
頭で認識するより先に、
ほぼ、無意識的に呟いた名前。
それは、今日は出会うはずのなかった大好きな幼なじみのもの。
そんな自分の声で、上げた視線の先にいた人に気づいた。
「たしかに、みっくんだ………」
全然、近くない。
ずっと離れた向こうに見える人影だけど、私が見間違えるはずもなかった。
シャツにジーンズ、なんてラフな格好のあれは絶対にみっくんで、その隣にいる浴衣姿の女の子は────
一瞬思考を巡らせて、そして思い当たる。
「香音………ちゃん……」
ぽつりと呟いたその名前に、どうしてか胸の奥がキリリと痛んだ。
そういえば臨海のときに言ってたよね。
みっくんのこと、誘うって。
…やっぱり私の読みは当たりだったんだ。
“みっくんはきっと断らない” 。
あの日、夏奈ちゃんを誘った私は、やっぱりそれで正解だったんだって。
香音ちゃんの希望が叶ってよかった。
──────って、きっとそれだけでいいはずなのに。
私には、関係のないことのはずなのに。
早く、夏奈ちゃんのところに戻ろうってそう思う………のに。
まるで、ふたりに吸い寄せられるように、私の足はゆっくりとみっくん達のいる方へ近づいていく。