お前のこと、誰にも渡さないって決めた。



ある程度近づいて、ふたりの姿がハッキリ見えるような位置で、側の木の影に隠れた。



なんで……、私、こんなことしてるんだろう。


コソコソと盗み見なんかせずに、普通に声をかければいいのに。




でも……なぜか、それはできなかった。




木陰から顔だけ少し出して、ふたりの様子を見る。





それにしたって、香音ちゃん可愛いなぁ……。



みっくんとのデートとあって、相当気合いが入ってるのか、クルクルに巻いてアップにしている髪の毛。


遠くからじゃ見えなかったけれど、ピンクのグロスが重ねられた唇。



普段も可愛いけれど、今日は5割増ぐらいで可愛い。




私と似たような浴衣を着ているのに、そこから出ているオーラが違いすぎる。






「……、」






みっくんだって、きっと “可愛い” って思ったよね。



そう思うと、胸の当たりがモヤッとして。





あれ……これじゃなんだか、


“みっくんに香音ちゃんのことを可愛いって思って欲しくない” みたいな──────





「……え?」




慌てて、口元を両手で抑える。





だって。




自分で考えたことが、ストンと胸に素直に落ちてきてびっくりした。




“みっくんに香音ちゃんのことを可愛いって思って欲しくない”




頭の中をぐるぐるする、その言葉が妙にしっくりくる。




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