お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


『……ひまり、すぐそっち行くから。だから、大人しく待ってて』


「夏奈……ちゃん?」


『電話越しに聞かされたってわかんないんだからね!!話くらい聞いてあげるってこと!』




強い口調だけど優しさに溢れた言葉に、私の目から、また涙の粒が零れた。




「ありがとう………」




そう言った私に、夏奈ちゃんは『今どこにいるの』と聞いて。


それに答えた私に、頼むから大人しく待っててね、と告げて電話はプチンと切れた。




──── 夏奈ちゃんには感謝してもし足りない。



きっと、1人だったらいつまでもこの場を離れられなかった。


さっきより少し落ち着いている自分に気づいて、ほっとした。





*





「ひまり………っ!!」




さっきまで電話越しに聞いていたその声に振り向くと、息を切らしながら膝に片手をついて、私に向かって右手を挙げた夏奈ちゃんがいた。





「夏奈ちゃん………っ」





さっき居場所を教えたばっかりで、あの神社はここから少し離れているのに。



息を切らせた夏奈ちゃんは、きっと走って来てくれたんだ。

だって、あれからまだほんの数分しか経っていない。






夏奈ちゃんが私の元へ駆け寄ってくる。


そして私と目を合わせた夏奈ちゃんは、




「あーあ、こんなに泣いちゃって。……ひまり、何があったの?」




と言ってゆるゆると柔らかい笑顔を浮かべた。


そんな夏奈ちゃんを目の前にして、やっと心の底から安心して。





「夏奈ちゃん……っ!!ふぇっ……」





夏奈ちゃんにガバッと勢いよく、抱き着いた。


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