お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
その次の瞬間。
「……えっ?」
私の口から間抜けな声がこぼれた。
目を疑うってこういうことを言うんだって思った。
私の視線の先にいるみっくんは、
「ちょっ、棚橋くん速すぎじゃない!?」
黙って見ることに集中していた夏奈ちゃんも、思わず私に話かけるほど
「嘘だろ、すげーなあいつ……」
「あれって、4組の棚橋?」
みんなが興奮ぎみに口を開くほど、
圧倒的なスピードと加速を一瞬のうちに見せつけていた。
見惚れるほど、綺麗なフォームで、まるで吹き抜ける爽やかな風のように。
そんなみっくんの姿に湧いたのは、もちろん私たちだけではない。
「うお─────っ!いいぞ光希〜!」
「これ、まだいけんじゃねーの?」
「行け!!」
沈んでいた4組の応援席が、歓声を上げはじめた。
それもそのはず。
走り出したみっくんは、先を走る翔太くんとの間にできた、誰もが埋まらないと思った差をどんどん縮めていくのだから。