お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
ふと冷蔵庫の隅のほうの、コーヒーティラミスが目に入る。
“いちばん苦い” のは、と店員さんにたずねて取り入れたメニュー。
甘ったるいのが好きな私とは無縁なケーキだけど。
……本当はきっと、浮かれているのは私の方だ。
みっくんの口に合うメニューを準備して、喜んでくれたらいいな、なんて想像したりして。
はやる気持ちを落ち着かせようと、ふーっと息をつきながら立ち上がれば、まだそこにいた香音ちゃんとばちり、と目が合った。
「あ………」
夢から醒めるように、むくむくと湧いてきたのは香音ちゃんへの罪悪感。
香音ちゃんは、みっくんが好きで。
みっくんの彼女で。
スタート地点に立った時点で、私の方が遥かに遅れていたのに。
『応援する』なんて、言ったのに。
ずるいことをしている自覚はあるんだ。
真っ先に諦めないと行けないのは、私の方で。
それができないなら、真っ先に香音ちゃんに謝るべきだったんだ。