お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
*
*


わいわいと、歓声で溢れる廊下。

模擬店の教室が並ぶそこには、美味しそうな匂いも立ち込めていて。



まさに、非日常そのもの。




「ひゃーっ、浅野くんのバトラーとか目の保養すぎる!」


「写真撮りたい、毎日眺められる〜っ」





そんな中、廊下のド真ん中を歩く私たちを取り囲む歓声も普段じゃ考えられない程で。



もちろん、100%翔太くんに向けられたものだけどね!




次から次へと近づいてくる女の子たちへの、翔太くんの対応もさすがで。




「似合ってる?ありがと〜、あ、よかったら1-8のカフェ来てくんない?」





さらりと交わしつつ、自然な流れで宣伝しながら歩いていく。





「あ、花岡ちゃんじゃん?メイド服かわいーっ!」


「あ、えっと、ありがとうございます……!あの、よかったら1-8で……」





見よう見まねで真似しようとしてみるも、
元々人見知りな私にはハードルが高い。



言い終える前に、その男の子に髪の毛に軽く触れられただけで、そのままうまく宣伝できないまま去って行ってしまった。




なんで上手くいかないかな……。

落ち込んだ気持ちを代弁するように、ふぅ、と唇から息が漏れる。




と、ほぼ同時に、うまく女の子たちから逃れた翔太くんが私を振り返った。




「せっかくだしさ、何か食べていかない?」


「っ!」




我ながら単純。

顔がぱあっと明るくなったのが、自分でもわかった。




「食べたいものとかある?」




翔太くんの質問に、少し考える。


うーん……模擬店にどんなのがあるか、あんまり知らないんだよね。




みっくんのクラスは模擬店じゃなくて劇だし、聞いた話によると、みっくんは出演しないみたいだし……。




これといって、お目当てのものがあるわけじゃなくて。



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