お前のこと、誰にも渡さないって決めた。

私が頬を緩めたことに気づいて、みっくんが安心したように息をついた。


………やっぱり、心配してくれたんだ。



じわりと心が温かくなる。




「じゃあ、帰るか」



帰るっていってもすぐそこだけど、とみっくんが言って。



頷いた私は手を振った。



せめて、みっくんが家に入るまで見送ろうと思って。




そんな私を見て、みっくんは、ふ、と頬を緩めた。



そして、私の頭をするり、と人撫でしてから、



「じゃあまた、」



と自分の家へと向かう。




「……くれぐれも、浅野には気をつけろよ」



扉の向こうに消える直前、みっくんが忠告してくれた言葉の意味だけは、いくら考えてもわからなかったけれど。




みっくんに撫でられた頭に残る感触が、まだ甘く疼いている。




……かじかんでいたはずの手は、いつのまにかぽかぽかと温かくなっていた。




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