お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
*


吐く息が白い。

……それに、なんだか今日は格別に寒い気がする。



ふるりと身体を震わせながら、
翔太くんとの待ち合わせ場所である時計台へと急いだ。




「あ……」




時計台が見える位置まで来ると、

もうそこに翔太くんらしき人影が見える。




いけない……っ、待たせちゃってる……!




慌てて、時計台まで駆け寄ると、翔太くんがこちらに気づいて手を上げる。




そして、翔太くんのところまで辿り着いて。




「ご、ごめ……っ、遅かったよね?」



頭を下げると、翔太くんは笑みを浮かべて首を振った。



「んーん、俺が早く来すぎちゃっただけ」



「ほ、ほんと?」



翔太くんは優しいからなあ、と私は半信半疑だ。


そんな私などお構い無しに、翔太くんは私の格好を見下ろして。




「今日の格好、かわいいね」



まるで彼女にでも言うような、甘い台詞を言うから。


なんだか照れてしまう。




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