お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
そう……かな?
でも頬にはチークなんか付けていないんだけどな……。
「今日は色付きリップしか塗ってないよ」
私がそう申告すると、
「じゃあ俺の見間違いかな」
くす、と翔太くんが笑った。
そして、翔太くんが笑顔のまま言う。
「たとえ、ひまりちゃんにそんなつもりはなくても、今日俺のためにこの格好してくれたんだ……って思うだけで、」
「…?」
「俺、すげぇ嬉しい」
にっこり笑顔の翔太くん。
翔太くんの言葉の意味が100%わかったわけじゃないけれど、翔太くんは喜んでくれているみたいだし、良かったよね。
「じゃ、そろそろ行こっか」
「うんっ」
頷いた私の右手を、ごく自然に掴んだのは翔太くんの左手だった。
そのまま、手を繋ぐ。
………友達同士って、手を繋いだりするものなの?
や、でも、そういうことだって、きっとあるよね。
だから、たぶん気のせい。
繋いだ手から伝わる翔太くんの脈が、ドキドキと早いのも。
私のことを見下ろす視線が、どこか甘くて切ないのも、たぶん。
「スイーツ、楽しみだね」
「ほんとに楽しみっ!」
なのに、今日、何かが変わる予感がするのは、なんでだろう。
私は妙なことを考え始めた頭をふるふる、と振ってその思考を頭の片隅に追いやった。