ただ、そばにいて。
 鷹森将司《たかもりまさし》は、瑞希が店長をしているブランドショップのエリアマネージャーだ。
 月に一度、担当エリアの店舗を巡回し、本社の方針や近年のトレンドをもとに経営戦略を提案していく。
 ディスプレイや接客態度、店舗が置かれているテナントビルの客層などをチェックし、なにか問題があれば店長である瑞希に指導をする。
 
 そして、ついでのようにベッドも共にしていく。
 そんな関係が三年も続いていた。


 いつもと変わらない表情で悠然とグラスに口をつける男に向かって、瑞希は「そう」とだけ答えた。

 狭い個室の四角いテーブルの上に、瑞希が注文したローストガーリックソースのサラダとグラスワインが載っている。
 ホテルに行くのにこのチョイスは失敗したかと思っていたが、そういう懸念は不要だった。

 瑞希はピッチャーに入ったソースを一気にサラダにふりかけた。
 アイスプラントのキラキラした葉は、その瞬間魔法が解けたように輝きを失った。
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