エリート御曹司とお見合い恋愛!?
 五階のエレベーター前で待ち合わせをしたので、そちらに足を向ける。案の定、倉木さんはすでに待っていて、姿を視界に入れて私はさらに急いだ。

 そして、お待たせしましたと声をかけようとしたところで、その言葉を飲み込む。倉木さんは電話をしていたからだ。

 いつものスーツ姿で、その顔はすっかり仕事モードだった。さっきまでの面影はまったくなくて、真剣な表情に私は目が離せなくなる。

「ヒンメル社運用ファンドへの出資について合意はとれてる。持分は二十パーセントの取得で進めてるけど。そう、あとは最終的な支払額は追々調整していく感じで……」

 少し離れたところで手持ち無沙汰に私は佇んだ。会話の内容は理解できないけれど、仕事の話なのは分かる。軽く髪を掻き上げて話を続ける倉木さんに視線を送っていると、

「分かった。来週の水曜日? ちゃんと空けてるって。段取り全部任せて悪いけど、恵美の好きにできてよかっただろ?」

 倉木さんの口から名前に心臓が跳ねる。恵美。その名前はこの前、レストランで待ち合わせしたときに、倉木さんに挨拶していた女性の名前だ。

 電話の相手はあの女性だったらしい。そして電話の内容から来週の水曜日は、その女性と約束をしているようだ。

 まただ。私は痛む胸を押さえた。なんでこんなに痛いのか、辛いのか分からない。なんだか泣き出しそうになる。この感情がなんなのか分からない。
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