エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「そう。この前、記念日だってお洒落して旦那さんとこの下のレストランに食事に来てたけど、結婚して今の苗字になったらしいよ。それに来週の水曜日の件は、他社と共同でしてたプロジェクトが一区切りついたから、それの打ち上げの話。幹事に任命されたけど、面倒で全部彼女に任せてたから」

 ま、その分行きたかったお店を彼女が好きに選んだみたいだけど、と付け加えられ、私の頭は情報過多でフリーズ寸前だった。

 倉木さんは話すだけ話して、そろそろ出ようか、と促してくれたので、素直にそれに応じる。ちらりと外の夜景に目をやり、私はビルの最上階であるラウンジを後にすることになった。

「倉木さん、今日はありがとうございました。そして、勝手なことを一方的にすみません」

 エレベーターに乗るまで、きっちりスタッフに見送られ、ドアが閉まって倉木さんとふたりになったところで、私はようやく声を発した。

 勝手に勘違いして、自分の立場もわきまえずに不躾なことを言ってしまった。恥ずかしいような、申し訳ないような。

「謝る必要ないよ。それにしても意外。桜田さんもやきもちとか妬いてくれるんだ」

「ち、」

 からかい混じりの口調に、私は否定の言葉を反射的に唱えようとする。でも、それをすんでのところで思い留まらせた。

 言いよどんだ私に倉木さんが不思議そうな視線を投げかけてきたが、目を合わせられず、下を向く。

 図星だった。私は倉木さんの本当の彼女でもなんでもないのに、一人前に嫉妬していた。恵美さんのことが気になって、気持ちが落ち着かなかった。そんな権利、私にはないのに。
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