エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「すみません、違うんです。その、ここのところ仕事が忙しくて、早番だったのもあって」

「でも、少し顔色悪いよ? 週末、なんか忙しかった? ちゃんと体を休めないとだめだよ」

 しどろもどろになりながら言い訳すると、まるで子どもに言い聞かせるような口調で返され、私は苦笑した。

「ちょっと服を買いに行ったくらいで、ちゃんと休みましたよ」

 今日の倉木さんはチャコールグレーのスーツに、ブルーのレジメンタルタイとシンプルだけど、相変わらずスマートにまとめている。この前の私服姿とは、やはり印象は全然違う。

 顔色が悪いのは倉木さんのせいだなんて言えない。けれど倉木さんと会って、駅で見た光景が頭をよぎり、苦しくなる。

 なんでもないかのように週末の話題を振られ、私の心は乱れっぱなしだ。倉木さんは誰と過ごしたんですか、なんて訊きたいけど訊けるわけない。

 訊いたところで、その答えが誰であっても私と倉木さんの付き合いは変わらないのだから。

「すみません、私もう行きますね」

 逃げるようにして、その場を後にしようとしたところで倉木さんは再度、私に呼びかけた。

「今日、仕事終わってから時間ある?」

 急なお誘いに、私は視線をさまよわせた。会えば、もっと苦しくなる。諦めるのが辛くなってしまう。
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