エリート御曹司とお見合い恋愛!?
「お前、そうやっていつも女の子口説いてんの? なんだよ美緒ちゃんって」

 刺々しく倉木さんが突っ込むと宮川さんが苦笑した。

「口説くとか倉木には言われたくないって。それにお前が名前で呼んでるから、俺も倣っただけだよ。あ、もしかして嫌だった?」

 最後は私に確認するように言われて、慌てて首を横に振った。

「あ、いえ。好きに呼んでください」

 ほらなーと倉木さんに笑顔を向ける宮川さんに対し、倉木さんはどこか面白くなさそうだった。とりあえず、グラスを合わせて乾杯する。

「いつもと香りが違う?」

 グラスに口づけようとしたところで倉木さんが問いかけ、宮川さんの顔がぱっと明るくなった。

「気づいたか? いつもは普通のミントなんだけど今日は特別にペパーミントで仕上げてみた」

 そのとき、何席か隣から宮川くん、と呼ぶ声が聞こえ、宮川さんはそちらに行ってしまった。バーテンダーという仕事はお酒のことだけではなく、話も上手くないといけないし、なかなか忙しいようだ。

「それ美味しい?」

 質問を投げかけられ、私はグラスから口を離した。

「はい、とても。甘くて飲みやすいですよ……よかったら飲んでみます?」

 グラスを傾け、提案してみたが、倉木さんは職場の先輩ではないのだ。こんな気軽に口つけたものを勧めるなんて失礼だろうか。

 いや、付き合っているならいいのか。それにしたって、倉木さんが飲んでいるものを考えると、どう考えても好みではなさそうである。断られるのを想像していると、私の手からグラスがそっと取られた。
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