エリート御曹司とお見合い恋愛!?
 そこで私ははたと気づいた。もしかしてこれは、単にからかわれただけなのではないだろうか。そもそも宮川さんは私より倉木さんの性格をずっと把握しているわけで、本気でそんなこと思うわけない。

 そういう結論に達すると、必死だった自分がなんだか逆に滑稽に思えてきた。

 恥ずかしさのあまり、顔が熱くなる。相変わらず宮川さんの顔は笑みをたたえている。その顔はなにもかも見透かしているみたいで、おかげでつい自分の気持ちが口を衝いて出た。

「違うんです。……その、私の一方的な片思いなんです」

 初対面の、しかも倉木さんの親しい人になにを言っているのか。 けれど、私がこうして自分の想いを口にするのは初めてだった。

 諦めるだけのこの気持ちを、誰かに聞いてほしかったのかもしれない。知っておいてほしかったのかもしれない。

「いつもなら、誰にも本気にならないし、あんな奴やめておけ、って言うんだけどね」

 グラスを並べ終えた宮川さんが、唐突に話し出して、こちらを向いた。そして

「で、俺にしておきなよっていうのが定番の口説き文句なんだけど」

 茶目っ気たっぷりに続けられ、私はどう返事すればいいのか迷う。すると宮川さんが相好を崩した。

「でも、やめておくよ。そんなことしたら、あとが恐ろしいし」

「え」

「あ、ほら。恐い顔したお兄さんが帰ってきたよ」

 そう言われて入口の方に顔を向けると、電話を終えた倉木さんが宮川さんの言う通り、怒ったような表情でこちらに戻ってきていた。あまりよろしくない電話だったのか。
< 85 / 119 >

この作品をシェア

pagetop