未知の世界5

大部屋で入院しているゆりちゃんをベッドに座らせ、カーテンを閉める。






「お母さん、椅子に腰掛けてください。」







何が始まるのかと不安なゆりちゃんのお母さん。







「少し胸の音を聞かせてください。」








『えっ?』








戸惑いながらも私に言われた通り、胸を開く。すぐさま聴診器を通す。








聴診の後は瞼を下げる。








かなりの貧血。胸の音も鼓動が早い。







脈を図りながら持っていたPHSで連絡する。






触れるとわかる。かなりの熱。








「あ、石川先生…」







一先ず指導医の石川先生に報告する。








「お母さん。これから内科を予約しましたので今から保険証を持って外来に行ってください。」







『え?どうして?』







「熱があるようです。それにかなりの貧血も。疲れたままでは倒れてしまいますよ。






ゆりちゃんは、私や看護師たちが代わりに見ていますので、気にせず行ってきてください。







きっと点滴を打つことになると思いますけど、その時はしっかり眠るんですよ。







最近、病室でのゆりちゃんの付き添いで眠れてないんじゃないですか?一人で抱えず、私たちを頼ってくださいね。」







そう声を掛けると、ゆりちゃんのお母さんは両手で顔を追った。







『ぅっ…ありがとう…ございます…。







私…初めての娘の入院で、どうしたらいいのか…。こんなことになってしまって、私がこの子を妊娠中に何かしたからこうなったんじゃないのかとか、育てる途中で何かやってしまったのではないかとか…いろいろ考えてました。
どうして健康な子供に産んでやれなかったのか。』









ゆりちゃんのお母さんはさらに嗚咽をもらしながら泣く。




「いえ、お母さん。自分を責めないでください。
誰も悪くありません。今は良くなってきてますので、大丈夫ですよ。」






ゆりちゃんのお母さんを落ち着かせ、私はゆりちゃんを抱いてお母さんを外来に向かわせた。






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