俺様社長と極甘オフィス

｢こんにちは｣

｢こんにちは、ななちゃん。あれ？　今日は京一くんも？　珍しいね｣

　いつも通り迎えてくれた田中さんが、私の隣にいる社長を見て目を丸くした。

｢お久しぶりです、田中さん。なかなか顔が出せず、いつもうちの藤野がお邪魔してすみません｣

｢いえいえ、なんの。顔を見せてくれて嬉しいよ｣

　穏やかに笑う田中さんの顔に笑い皺ができる。さすがは癒しの田中さんだ。そして奥にあるエレベーターの扉前まで進み、私は社長に見守られながら、緊張した面持ちで言葉を入力した。

　どうか、どうか……。

　ドキドキしながら一文字ずつ打ち込む。最後の文字を押して、緊張しながら決定ボタンを押す。そして一拍間をおいてから、今まで聞いたことがない機械音が聞こえた。

　なにか、ロックが外れたような。そして、ゆっくりと重々しい音を立てて灰色の扉が開く。中はやや狭いエレベーターだ。

｢あい、た｣

　思わず声が漏れて後ろを振り向くと、社長が信じられない、という顔をして呆然としていた。

｢開いた、のか？｣

｢開きました、ね｣

　お互い確認するように、ゆっくりと声に出してみる。目の前には早く乗れと言わんばかりに、エレベーターが我々を待ち構えていた。さて、どうするべきか、と思っているところでいきなり社長に力強く抱きしめられた。