俺様社長と極甘オフィス
 もう少しでなにかが繋がりそうな気がする。なんだか喉に小骨を詰まらせたかのような気持ち悪さだ。なんだろう、美代子さんに漢字を聞いたからだ。

 正一氏や社長の名前、そして倉木さんの名前の候補だった穣一。これらの漢字を私はどこかで見たことがある。でも、どこで?

「あっ!」

 私はつい声をあげてしまった。おかげで美代子さんは不思議そうな顔でこちらを見ている。それをフォローする間もなく、私は急いで自分のパソコンに向かって、あるものを検索した。

 そして予想していたものが確信に変わり、感じていた気持ち悪さが引いていく。前一氏がこだわっていたのは、そういうことだったのだ。

 そして十中八九、五十二階のパスワードも見当がついた。それを急いで試してみたくなり、美代子さんに声をかけようとすると、彼女は帰り支度を始めていた。

「コーヒーご馳走様。また近々、顔を出すから京一くんによろしく伝えておいてくれないかしら?」

「はい。あの、今日は、ありがとうございました」

 私が頭を下げると、美代子さんは目を丸くした。お礼を言われるようなことはなにもしていない、と笑ってくれたが私は本気で心から感謝している。

 きっと、この人が今日、ここに現れず、話をしなかったら、答えには辿り着かなかった。

 美代子さんを見送って、私はもう一度、五十二階に足を運ぶことを決意する。試してみよう。今までに感じたことのないくらいのプレッシャーを感じて私は部屋を後にした。
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