俺様社長と極甘オフィス
 私は五十二階のエレベーターの前で固まっていた。予想していた数字を打ち込んでみたが、ロックは解除されなかったのだ。

 確信があっただけに、私はその場でへたり込む。もうこれ以上の候補が浮かばない。なんだか泣けてきそうだ。それにしても、私はなにをこんなに必死になっているのか。

 社長への下心か、秘書としてのプライドか。いや、そこまで複雑なものじゃない。ただ単に、あの人のためにできることを精一杯やりたいのだ。

 喜んでほしくて、望んでいるなら叶えてあげたい。これは純粋な恋心だ。

「それにしても、パスワードはなんなんだろう」

 独り言を宙に放つ。返事はもちろんない。しかし、ここまできて諦めるのも嫌だ。なんとなく、近いところまではきているはずだ。

 あれこれ思い巡らせていると、ふと社長の言葉を思い出す。

『絶対に俺の名前だと思ったんだけどなぁ』

 頭の中で反響させて、私は目を見張った。もしかしたら、そういうことなのかもしれない。
 
 私は勢いよく立ち上がると、再びモニターの数字キーを押し始める。どうか、これであっておいてほしい。社長のためにも。
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