俺様社長と極甘オフィス
「全然違う。周りに女性はたくさんいたけれど、俺が初めて自分から手に入れたいって思ったのは藤野だけだし」

 顔から火が出そうになる。もうポーカーフェイスは無理だ。そんな私を社長は力なく抱きしめ直した。

「あーもう。惚れた者の負けだよね。まさか自分がこんな長い間、片思いをすることになるなんて。しかも当の本人にはまったく気持ちが伝わってなかったという」

 なんだか微妙に責められている気がして、私はつい口を尖らせた。

「女性になら誰にでも優しい社長にだって、問題がありますよ」

「誰にでも優しいねぇ。藤野以上に誰かに優しくしたことなんてないけど」

 もう私はどう返していいのか分からない。しばらくの沈黙のあと、社長がごめんと一言呟いた。改めて顔を見合わせると、なんだか気まずそうな顔をしている。けれど私はまっすぐに社長の顔を見据えた。

「きちんと自分の気持ちを伝えなかった俺が悪かったんだ。でも、もし伝えて藤野が離れていくなんてことは絶対に避けたくて。失いたくなかったんだ。だから、こんな曖昧なやり方で繋ぎとめることしかできなくてごめん」

 私は静かに首を横に振った。

「私、これからも社長のそばにいていいですか?」

「もちろん。というより、藤野がいないと俺が生きていけないんだけれど」

 社長のおどけた口調に少しだけ緊張がほぐれる。

「それは、困りましたね」

「困ったよ。どうしてくれる? 優秀な秘書さん」

 茶目っ気たっぷりに言われて私は笑った。すると、社長がゆっくりと顔を近づけてくるので、照れつつも瞳を閉じると、唇が重ねられる。
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