俺様社長と極甘オフィス
 心臓が壊れそうに痛い。社長の顔をちらりと窺うと、幸せそうに笑ってくれていた。つられて私も微笑むと、再度唇が重ねられる。先ほどよりも長く口づけられ、唇が離れると今度は頬や瞼の上などにキスされる。

「好きだよ、もうずっと前から」

 そして、その唇から紡がれる言葉に、私はどう反応していいのか困ってしまった。相変わらずキスを続けようとする社長に、私は思い出したように話を振る。

「そういえば、おじいさまの手紙には、なんて記されていたんですか?」

 わざとらしかったか、と思ったが、社長は私の額に口づけひとつ落として、しまっていた手紙を取り出した、そして私に差し出す。

「読んでみたらいいよ」

「しかし、それは社長宛で」

「いいよ、藤野なら」

 そう言われてしまっては頑なに拒否はできない。私は手紙を受け取り、慎重に扱いながら、中身に目を走らせた。そこには、流麗な文字が並んでいる。最初の一行目は「紀元京一様」と書いてあった。

 こんな盛大な仕掛けをしたのは、前一氏からの教訓だった。ここに来るまでに、苦労したであろうこと。色々な人の力を借りて、ここまで来たことを忘れないでほしいという冒頭だった。

 自分や父から受け継ぐものが多すぎる社長に、どんなに立場が偉くなっても、いつも誰かに支えられていること、そんな人たちをちゃんと大事にするように、と経営者として、というよりも、祖父から孫へ、という文体で綴られていた。そこには直接会ったことがない私でも、深い愛情を感じることができる。
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