俺様社長と極甘オフィス
 そして、名付けに込められた思い。経営者として、大きな数字を扱うことになっても、それに囚われることなく、どんな数も一の積み重ねであるということを忘れないでほしい、との願いを込めたらしい。

 最後は、ここに辿りついたことへの感謝と激励の言葉で締めくくられている。

「素敵なおじいさまですね」

 私はゆっくりと手紙を社長に返した。

「そういう話を、じいさんが生きている間に、もっとしておくべきだったんだろうな」

 少しだけ寂しそうな顔をする社長に、私はなにも言えない。そんな私の頭を社長は優しく撫でた。

「ここは、しばらくこのままにしておくよ。仕事に関する資料や、じいさんの読んでた本もたくさんあるし、ここで学べることはたくさんありそうだ」

「おじいさまもきっと喜ばれていますよ」

 社長がここに辿りついてくれたこと、そんな決断をしたこと。なにより社長が自分の跡を継いでくれること。

「では、色々と手配しなくてはなりませんね。早速、顧問にも連絡して……」

 そこで、すっかり仕事モードになった私を社長がじっと見つめてきた。その視線の意味が分からず、私は首を傾げる。

「どうされました?」

「とりあえず、今日は仕事の話はもうやめよう。せっかくの休日だし」

 そこで私は思い出した。私もだが、社長は社休みで、用事だってあって忙しかったのだ。
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