俺様社長と極甘オフィス
「そんな緊張しなくても」

「しますよ。私は社長と違って、こんなときどうしたらいいのか分からないんです」

 自棄になってつい暴露する。こんな状況で落ち着いて対応できるほど、私の恋愛経験値は残念ながら高くないのだ。そんな私をなだめるかのように、社長は優しく頭を撫でて、髪を梳いてくれる。長い指の感触が心地いい。

「どうもしなくていいよ、藤野はそのまんまで」

 髪を滑っていた手が、ゆっくりと顔の輪郭を伝い下りてくる。次に焦らすように唇をなぞられた。そして改めて視線を合わせた瞬間、

「好きだよ」

 その言葉を封じ込めるように口を塞がれる。苦しくて、心臓が煩くて、泣きそうになるのは、きっとこの口づけのせいだけじゃない。

 酸素を求めて薄く唇を開けると、軽く舐めとられて、反射的に体が震えた。でも頬に添えられた手が、見つめてくる瞳が、優しくて拒否できない。

 きつく結んだ唇を再びほどくと、キスはあっという間に深いものになる。こうなると、もう社長のペースで、私なんてされるがままだ。

 でも嫌じゃない。こんなふうに求めてもらえて、恥ずかしさはあるけれど、心は満たされていく。もっと近づきたくて思い切って社長の首に腕を回すと、改めて抱え直されて、さらにくっつくことが許された。

 どれぐらいキスをしていたのか、分からない。名残惜しく唇を離されて、ふいっと視線を逸らして下を向く。息が上がって、脈が速い。素直に社長に体を預けると、思いっきり抱きしめられた。
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