俺様社長と極甘オフィス
「藤野が可愛すぎて辛い」

「目と頭は大丈夫ですか?」

「うん、それも照れ隠しだって分かってるから大丈夫」

 もうなにが返ってくるのか予想できないので、私は押し黙った。頭を撫でてくれる社長の手が温かい。それからどちらともなく離れて立ち上がる。いつまでもここにいるわけにもいかない。そして、なにげなく社長が私の手を取った。

「公私混同は極力しないし、藤野を困らせるつもりもない。けれど、藤野が思っている以上に、俺は藤野のことが好きだよ」

 そこで社長は言葉を区切った。真剣な眼差しが私を捕えて離さない。

「だから、覚悟しておいて。俺がどれぐらい藤野のことが好きなのか、これからじっくりと伝えていくから」

 私はなにも答えずに、そのままエレベーターの方へ足を進める。さすがに不安になったのか、社長が少しだけ慌てた顔をした。

「私が思っている以上に、なんてどうして分かるんですか?」

 冷静に返すと、社長が一瞬だけ言葉を詰まらせた。ボタンを押すと、すぐに扉は開いたので中に乗り込む。

 ずるい。言われっぱなしで、まるで社長だけがずっと片思いしていたみたいだ。そんなことないのに。自覚するのは随分と遅かったけれど、私だって――

 不安げな表情を浮かべたままの社長に向き直ると、私はとびっきりの笑顔を向けた。

「私だって、ずっと好きでしたよ。京一さん」

 社長の不意打ちを食らったという顔に満足する。けれど、それと同時に口づけられたので、やはり彼には敵わない。それでもいい、この想いが少しでも伝えられたのなら。

 そのままゆっくりと、五十二階のエレベーターの扉が閉まった。しばしの間、この世界から私達だけを遮断するかのように。

Fin.
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