世子様に見初められて~十年越しの恋慕


にやりと口角を上げ茶を口にする康宗。
何もかも御見通しといった感じだ。

夜な夜な王宮を抜け出し足繁く通っていれば、気付かれていてもおかしくない。

ヘスは二十歳。
年頃の男であれば、女人に興味を持つのもおかしくないし、心惹かれる事もあるだろう。

王がまだ若い上、まだまだ旺盛な事もあって、世子に御子が授からなくともそれほど口煩く言う者もいなかった。
巷では世孫(セソン:王の孫)を望む声も多いが、数年前に王と側室との間に子が生まれた事もあり、宮廷内では、世子の座を企む陰謀も囁かれるようになるほど。
権力争いに勝つため、派閥争いが激化しているのも事実で。

康宗は、それらも全て踏まえた上で密偵を放っていたのだ。

「申し訳ありませぬ、父上」

ヘスが深々と頭を下げると。

「そなたはどうしたいのだ」

発せられた言葉は、飾り気のない直球な質問であった。

暫しの沈黙の後、ヘスは意を決して、胸の奥にひた隠しして来た気持ちを打ち明けたのだった。


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父上である康宗に、長年一途に想い続けて来た女性と再会し、更には先日の毒による負傷した自分を救ってくれたのも同じ人物であると。

これは運命以外の何物でもなく、自分にとってなくてはならないかけがえのない唯一の女性(ひと)だと。

ヘスの気持ちを知った康宗は、今まで誰にも話さずにいたとっておきの場所を教えたのだ。


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