世子様に見初められて~十年越しの恋慕
康宗は幼い頃、とても病弱であった。
まだ世子冊封(チェクポン:地位や称号を与えられる儀式)がなされていなかった為、王宮内に病を広める事を恐れ、離宮で暮らしていた。
チュ・カンジンとはその頃に知り合った友であり、唯一心を許せる友である。
カンジンは学に優れ、クスの良いお手本であった。
カンジンは特に手先が器用で、よく木彫りの細工を好んでしていた。
そんなカンジンから世子冊封の祝いに貰ったのが華角(ファガク:牛の角を紙のように薄く削り、それに絵を描き色彩し、木製品に貼って飾る伝統工芸)の木彫り粧刀(チャンド:護身用刀)である。
例え祝いの品だとしても、世子に贈り物をする行為自体が問題視されてしまうと思い、密かに贈った一品だったのだ。
離れ離れになったとしても、決して裏切ることのない友情の証として。
その話を聞いたヘスは、どうしてもカンジンに会いたくなったのだ。
才能がありながらも官吏(役人)にはならず、こうして山奥にひっそりと暮らしている男の暮らしを。
ヘスは柔和な表情で男に歩み寄り、懐から紙に包まれた干柿を取り出した。
「父から好物だと伺いまして」
ヘスは干柿をそっと机の上に置くと、カンジンは降参したかのような表情を覗かせた。
それは、時期的に手に入れる事の出来ない品だからだ。
王の友だと言うだけで足枷にならないとも言い切れない。
もし役職に就いたとしても、いつ自分が弱みの種になり兼ねないと思ったカンジンは、全てを捨て、山奥で一人ひっそりと暮らしているのだ。