世子様に見初められて~十年越しの恋慕
一筋縄でいかない男だと聞いていた為、ヘスはどんな事を言われても我慢する覚悟でいた。
父でさえ『友情の証が欲しい』と告げた際、カンジンは『揺るぎない絆の証拠を出してから言ってくれ』と言い返したという。
世子の座に就く者に対する態度ではない。
しかも、証拠を出せと言われて出せるようなものでもないし。
それでも屈しないクスは何日も悩みに悩んだ末、一度も経験した事の無い陶芸に挑戦したのだ。
王宮で使われる器を製造する部署に毎日通い、一から教わり、小さな茶器(湯飲み用)を作ったのだ。
誰でも手に入れる事が出来るようなものでは駄目だと思い、友の為に汗水流して努力する事に意義があると。
限りある時間を費やし、何とか形になったその茶器は、毎日使うものだからこそクス(康宗)の想いが込められている。
いつでも共にあり続けるという心が。
その話を聞いたヘスは、自分も大切にしている想いを何かの形にしたいと考えたのだ。
王命を賜った身で、自由に使える時間など無い事も承知している。
だが、父曰く、例え寝る時間を削ってでもかけがえのないものの為に努力する事も大事だと。
民の上に立つということは、民の苦労を知ってこそだと。
国王である父が自分を一人の男として、一人の人間として認めてくれたようで。
それに応えたい想いと、ソウォンを想う気持ちで突き動かされていた。
「では、その娘の為に死ぬほどの汗を掻いて貰いましょうか」