世子様に見初められて~十年越しの恋慕
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「お嬢様、あそこが闇取引を仕掛けていると噂の穀物商です」
「思ってたほど大きくないのね」
「恐らく、潜窟場所は他にあると思われます」
「そうね。人の出入りが多ければ、必然的に避けるわよね」
小高い場所から見下ろす形で、とある穀物商を探っている。
戸曹判書の屋敷で見つけた謎の木札。
その木札に書かれていた暗号から、ソウォンは一つの答えを導き出そうとしていた。
「ユル、用意は出来てる?」
「はい、お嬢様」
「では、行きましょう!」
男装姿のソウォンは、ユルと数名の商団の者を連れ、眼下にある穀物商へと向かった。
ユルを大辺首(テヘンス:商団の長)に見立て、ソウォンは事前に準備させた薬草の取引を持ち掛ける算段なのだ。
そして、取引を重ねる中で木札の暗号との接点を調べようとしていた。
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「世子様っ、このような事は私共にお任せ下さいっ」
「良いのだ。これは私がすべき事ゆえ、手出し無用だ」
「ですが……」
ヘスは申時(シンシ:午後一時から午後三時頃)の刻になると、毎日欠かさずカンジンの元を訪れていた。
カンジンからの条件は、湯殿(風呂)を沸かせるほどの薪割りをするという事。
それも、カンジンから合格の声がかかるまで一日たりとも欠かしてはならぬという決りが事が。
ヘスは剣術や馬術、狩猟の訓練をした事はあっても、畑仕事や水汲み、薪割りといった生活に欠かせない仕事をした事がない。
それも当然である。
生まれた時から王宮で育ち、正妃の第一皇子として生を受けたのだから、誰もが世子として接し、世子冊封された後も当然苦労とは無縁の生活。
勿論、世子には世子の苦労があるのも当然だが、平民の暮らしとはかけ離れている。