世子様に見初められて~十年越しの恋慕
二十歳と若いため、体力には自信があった。
だが、幾ら体力があって剣術に長けていると言っても、薪割りの技術には役立たずで。
初日の薪割りでは、真面に割ることすら出来なかったのだ。
手には肉刺(まめ)ができ、皮が剥け血が滲む。
力任せに斧を振り落としている為、肩や背中、腰が悲鳴を上げていた。
そんなヘスを見守っているヒョクは耐え切れず、おろおろと狼狽するばかりで。
世子の御体に不要に傷を負わせているようで気が気でないのだ。
「ヒョク、頼むから見えない所にいてくれ」
「ですが、世子様」
「気が散って集中出来ん」
「………申し訳ありません」
ヘスは無我夢中で斧を振り下ろす。
だが、端部分が欠ける程度で、綺麗に真っ二つに割れるには程遠い。
少し苛立ち気味のヘスを見据え、ヒョクは意を決した。
「世子様、その斧をお貸し下さい」
「手を貸すなと申した筈だ」
「貸すのではありません。私が薪割りを致しますので、よ~~くご観察下さいませ」
「………………」
ヘスは自分が無能だと言われているようで恥ずかしく、苛立ちが拭えない。
けれど、師匠(カンジン)が求めている事は我を通す事ではなく、民の苦労を知る事は民の声に耳を傾けるという事であると諭しているのだと理解していた。
苛立つ感情をぐっと堪え、ヘスは深呼吸し、手にしている斧をヒョクへ差し出した。
これは、自分に課せられた修行である。
自ら壁を乗り越えなければ意味がない。
ヘスはヒョクが割る姿勢や所作を隈なく観察した。